結論:Kling単体での補助金申請は難しい場合が多い
まず結論から
テキストや画像から動画を生成するAI動画生成ツール「Kling」を、それ単体で「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」の対象として申請するのは、難しい場合が多いというのが正直なところです。同制度は原則として、事務局に登録されたITツールを、登録されたIT導入支援事業者を通じて導入することが前提だからです。
Klingは海外発のAI動画生成サービスであり、執筆時点で同制度の登録ITツールとして整理されているとは限りません。登録されていないツールは、いくら業務に役立つものであっても、その制度の補助対象経費には原則として含めにくいという構造があります。
ただし「補助金がまったく使えない」という意味ではありません。後述するとおり、登録済みの業務システムとセットで導入する、AI機能を内包した登録支援事業者のサービスを利用する、あるいはものづくり補助金など別制度を検討する、といった複数のルートがあります。本記事では、なぜ単体だと難しいのか、どんなルートなら対象になり得るのかを順に整理します。
なお、補助率や上限額、対象範囲は年度や公募回ごとに見直されます。最終的な可否は、必ず最新の公募要領と事務局の登録状況を確認したうえで判断してください。
なぜKling単体だと難しいのか
「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」は、中小企業や小規模事業者がソフトウェアやクラウドサービスを導入して生産性を高める取り組みを支援する制度です。ポイントは、補助の対象が原則として次の二つの条件を満たすものに限られる点にあります。
- 事務局に登録されたITツールであること。あらかじめ審査・登録されたソフトウェアやクラウドサービスが対象です。
- 登録されたIT導入支援事業者を経由して導入すること。申請手続きや導入支援は、この支援事業者と二人三脚で進めます。
Klingのように海外のAI動画生成サービスを個人や法人が直接契約して使う形だと、この二つの前提から外れやすく、そのままでは対象になりにくいのが実情です。さらに、動画生成のような汎用的なクリエイティブ用途は「どの業務がどれだけ効率化されたか」を数値で示しにくく、審査で求められる生産性向上の説明が難しいという側面もあります。
| ケース | 通りやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 登録ITツールを支援事業者経由で導入 | 対象になり得る | 制度の前提を満たす |
| 登録済み業務システムにAI動画機能が含まれる | 対象になり得る | 登録ツールの一機能として整理できる |
| Klingを単体で直接契約して利用 | 難しい場合が多い | 登録ツール・支援事業者の前提から外れやすい |
| 用途が汎用的で効果を数値化できない | 難しい場合が多い | 生産性向上の説明がしにくい |
つまり、問われるのは「Klingが良いツールかどうか」ではなく「制度の枠組みに乗せられるかどうか」です。同じAI活用でも、議事録や文字起こし、契約レビュー、データ分析、営業支援といった業務系の用途は、削減できる工数を数値で示しやすく、業務システムとのセット申請にも乗せやすい傾向があります。一方、動画や画像、文章の生成といったクリエイティブ系は、後述のものづくり補助金など別の制度のほうが相性が良いこともあります。
対象範囲や登録状況は公募回ごとに変わります。判断の前に必ず最新の公募要領と事務局サイトの登録ツール一覧を確認してください。
Klingを活かせる3つのルート
「単体は難しい」で終わらせない
Kling単体での申請が難しくても、AI動画生成という取り組み自体をあきらめる必要はありません。視点を「ツール単体」から「業務の仕組みづくり」へ広げると、補助金を活用できる現実的なルートが見えてきます。
- 登録済みの業務システムとセットで申請する。たとえばマーケティングや販促の管理ツール、動画を含むコンテンツ制作・配信を支援する登録ソフトウェアを導入し、その業務改善の一環としてAI動画の活用を位置づける考え方です。あくまで補助対象は登録ツール側であり、Klingはその運用を補完する位置づけになります。国内中小企業では、Notta(議事録・文字起こし)やイルシル(資料・スライド生成)、Sales Marker(営業リスト・アプローチ支援)のような業務系ツールを軸に据え、制作工程の一部にAI生成を組み込む構成が検討しやすいでしょう。
- AI機能を内包した登録支援事業者のサービスを使う。動画生成や画像生成などのAI機能を組み込んだ国内向けクラウドサービスのなかには、登録ITツールとして整理されているものもあります。Kling相当の生成機能を含む登録サービスを支援事業者経由で導入できれば、制度の前提を満たしやすくなります。
- ものづくり・事業再構築・中小企業省力化投資補助金など別制度を検討する。動画や画像、文章の生成といったクリエイティブ用途は、革新的なサービス開発や試作開発を支援する「ものづくり補助金」と相性が良い場合があります。新しい映像サービスの開発、制作プロセスの自動化による省力化など、AI生成を事業の核に据える計画であれば、これらの制度のほうが説明しやすいことがあります。
どのルートが自社に合うかは、Klingで何をしたいのか(社内の制作効率化なのか、新サービスの立ち上げなのか)によって変わります。目的を言葉にできると、適切な制度とルートが絞り込みやすくなります。