結論:イルシル単体での補助金申請は難しい場合が多い
まず押さえておきたいこと
日本語のAIスライド・資料自動生成ツール「イルシル」を、それ単体で「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」の対象にするのは難しい場合が多いのが実情です。まずはこの前提から確認していきましょう。
イルシルは、入力したテキストや構成案からAIがスライド・プレゼン資料を自動生成してくれる、日本語に最適化された業務支援ツールです。資料作成の工数を大きく減らせるため、社内でのニーズは高い分野といえます。
ただし、補助金の世界では「便利なツールかどうか」と「補助対象になるかどうか」は別の話です。デジタル化・AI導入補助金は、原則として事務局に登録されたITツールを、登録されたIT導入支援事業者を通じて導入する場合を対象とする仕組みになっています。
そのため、イルシルのような単機能の資料作成ツールを単独で申請しても、登録要件を満たさず対象外になる、あるいは効果の数値化が難しく採択につながりにくい、というケースが少なくありません。とはいえ「全く可能性がない」わけではなく、組み合わせ方や使う制度を変えることで、対象に近づけられる余地は残されています。
この記事では、なぜ単体だと難しいのか、どうすれば対象になり得るのか、そして実務上の注意点を、誇張せず正直に整理します。なお補助率や上限額、対象範囲は年度や枠によって変わるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。
なぜイルシル単体だと申請が難しいのか
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)には、他の多くの補助金と違う独特の前提があります。それが、次の2つです。
- (1) 事務局に登録されたITツールであること。あらかじめ審査・登録されたツールだけが補助対象になります。未登録のツールは、どれだけ優れていても原則として対象外です。
- (2) 登録されたIT導入支援事業者を通じて導入すること。申請者(中小企業・小規模事業者)が単独で手続きするのではなく、登録支援事業者とペアで申請する建て付けになっています。
イルシルのような資料作成特化のツールは、この2つの要件を単体で満たしているとは限りません。仮に登録があっても、汎用的な資料作成は「導入効果を数値で示しにくい」という別の壁にぶつかりやすい点も、難しさの一因です。
具体的に、通りやすいケースと難しいケースを整理すると次のようになります。
| 観点 | 通りやすいケース | 難しいケース |
|---|---|---|
| ツールの登録 | 事務局登録済みのツール、または登録ツールに内包される機能 | 登録のない単体ツールを単独で申請 |
| 導入の入口 | 登録IT導入支援事業者を経由している | 事業者を介さず自社だけで完結 |
| 業務との結びつき | 特定の業務プロセス改善とひも付き、効果を数値化できる | 汎用利用で、削減工数や効果を示しにくい |
| 申請枠との整合 | 対象枠の要件(業務システム等)に合致 | 枠の対象範囲から外れている |
イルシルの場合、議事録や報告書、提案資料づくりといった「日常的な資料作成」を効率化するツールであるぶん、左の列に寄せる工夫(業務との結びつけ・数値化・登録ルートの活用)が鍵になります。
登録ツールの一覧や対象要件は年度・枠によって変動します。申請前に必ず最新の公募要領と事務局の登録情報をご確認ください。
イルシルを補助金につなげる3つのルート
「単体では難しい」を出発点に考える
単体申請が難しいなら、視点を変えて「どんな組み合わせ・どんな制度なら対象になり得るか」を考えるのが現実的です。代表的なルートは次の3つです。
ルート1:登録済みの業務システムとセットで申請する
イルシル単体ではなく、すでに事務局登録されている業務システム(例:営業支援、文書管理、情報共有基盤など)の導入とあわせて、資料作成の効率化を一連の業務改善として位置づける方法です。営業資料や提案書、社内報告の作成プロセスを、登録ツールを中心とした仕組みの一部に組み込めれば、対象に近づけやすくなります。日本語業務ツールでも、Sales MarkerやGVAなど業務システム寄りのものとセットで設計する発想が有効です。
ルート2:AI機能を内包した登録支援事業者サービスを使う
資料生成・文章生成などのAI機能を、より大きなSaaSやパッケージの一機能として持つサービスを、登録IT導入支援事業者経由で導入する方法です。議事録AI(NottaやRimo)、契約・法務AI(GVA)のように、特定業務に組み込まれたAIは効果を数値化しやすく、補助金の文脈に乗せやすい傾向があります。イルシルのような資料生成も、こうした業務ソリューションの一部として扱えないかを検討すると道が開けます。
ルート3:別の補助制度を使う
デジタル化・AI導入補助金にこだわらず、ものづくり補助金、事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金など別制度の活用を検討する方法です。とくに、画像・動画・文章生成といったクリエイティブ用途でAIを使い、新サービスの試作開発や革新的なサービス提供につなげる場合は、ものづくり補助金(革新的サービス・試作開発)との相性に触れる価値があります。イルシルを「資料を量産して新しい提案型サービスを立ち上げる」といった事業計画の一部に組み込めれば、制度の趣旨に合致しやすくなります。
いずれのルートでも共通するのは、「ツールを買うこと」ではなく「ツールで業務や事業がどう変わるか」を計画として描けるかどうかです。