IT導入補助金AI枠とは:制度の概要と2026年の位置づけ
IT導入補助金は、デジタル化・AI導入補助金2026の中核をなす制度で、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の費用を国が補助します。2024年から「AI・デジタル化基盤導入枠」として生成AIや業務AIツールが対象に追加され、2026年版ではさらに補助対象の幅が広がっています。
IT導入補助金2026【AI・デジタル化基盤導入枠】
補助率
1/2〜3/4(枠・要件による)
上限額
450万円
下限額
5万円
申請方式
電子申請(Jグランツ)
IT導入補助金には複数の申請枠が設けられており、AIツールは主に「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」と「セキュリティ対策推進枠」で申請可能です。2026年は特にインボイス対応・電子帳簿保存法対応ツールと連携するAIツールへの優遇措置が拡充されています。
制度の大前提
IT導入補助金は「IT導入支援事業者(認定ベンダー)」が申請を代理で行う仕組みです。企業単独では申請できません。まず認定ベンダーを選定することが、IT導入補助金活用の第一歩です。
申請対象となる企業・事業者の要件
IT導入補助金AI枠の対象となるのは、以下の要件をすべて満たす事業者です。
- 法人区分:中小企業・小規模事業者(製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下)
- GビズID:GビズIDプライムアカウントを保有していること
- SECURITY ACTION:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施するSECURITY ACTIONの「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言していること
- みらデジ:経営診断ツール「みらデジ」で経営診断を受けていること
注意:GビズIDの取得に時間がかかる
GビズIDプライムの取得には印鑑証明書の郵送が必要で、取得まで2〜3週間かかります。申請公募期間が始まってから取得し始めると間に合わない場合があります。公募前から準備を開始してください。
2026年版 補助対象AIツール一覧:何が申請できるか
IT導入補助金AI枠で補助対象となるツールは、認定IT導入支援事業者が登録した「認定ITツール」に限定されます。2026年版では以下のカテゴリが中心です。
ソフトウェア・SaaS系AIツール
- 生成AI・AIアシスタント:ChatGPT Enterprise/Team、Claude for Work、Microsoft Copilot、Google Workspace AIなどの法人向けプラン
- AI-OCR・文書処理AI:請求書・契約書の自動読み取り・データ入力自動化(AI-OCR)ツール
- AIチャットボット・カスタマーサポートAI:問い合わせ自動応答、FAQ生成AIツール
- AI搭載バックオフィスシステム:AI勤怠管理、AI経費精算、AI給与計算(freee・マネーフォワード等のAI機能付きプラン)
- AI需要予測・在庫管理:小売・卸売向けの発注最適化AI、欠品予測システム
- AI翻訳・多言語対応:訪日外国人対応、輸出入業務の多言語翻訳AIツール
「認定ITツール」であることが必須
どんなに優れたAIツールでも、IT導入支援事業者が事務局に登録した「認定ITツール」でなければ補助対象外です。ツール選定の前に、認定ベンダーと認定ツールのリストを必ず確認してください。
ハードウェア・周辺機器(デジタル化基盤導入枠)
デジタル化基盤導入枠ではソフトウェアに加え、以下のハードウェアも補助対象となります。
- PC・タブレット:AIツール利用のために必要なPC・タブレット端末(上限10万円/台)
- レジ・決済端末:AI搭載POSレジシステム、セルフレジ端末
- スキャナー・複合機:AI-OCR連携のためのスキャナー設備
ただし、ハードウェアのみでの申請は原則不可で、ソフトウェアと併せた申請が必要です。また、ハードウェアの補助上限は全体の補助額の一定割合に制限されています。
補助率と上限額:申請枠ごとの違いを整理
IT導入補助金には複数の申請枠があり、それぞれ補助率と上限額が異なります。AI関連ツールが申請できる主な枠は以下の通りです。
| 申請枠 | 補助率 | 上限額 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(A類型) | 1/2以内 | 150万円未満 | 会計・販売管理等の基幹系AI |
| 通常枠(B類型) | 1/2以内 | 150〜450万円 | 複数機能を持つ統合型AIシステム |
| デジタル化基盤導入枠 | 2/3〜3/4 | 350万円 | インボイス・電子帳簿対応AIツール |
| セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内 | 100万円 | AIセキュリティ・不正検知ツール |
補助率3/4が適用される条件
デジタル化基盤導入枠でインボイス対応・電子帳簿保存法対応のAIツールを導入する場合、最大3/4(75%)の補助率が適用されます。他の補助金との補助率比較もご確認のうえ、自己負担を最小化できる枠での申請を検討してください。
2026年の主な変更点:2025年からの改正ポイント
IT導入補助金は毎年制度が見直されます。2026年版における主な変更点・注目ポイントをまとめます。
- AI機能の補助対象明確化:生成AIのAPIコスト、AIモデルの導入費用が補助対象として明示されました。2025年以前は認定ベンダーによって解釈が異なる場合がありましたが、2026年版では指針が整備されています。
- クラウドサービスの補助期間延長:SaaS型AIツールの月額費用の補助期間が最大2年間に延長されました。初年度だけでなく、継続利用コストも補助対象になります。
- 賃上げ要件の厳格化:補助金受給後の従業員賃上げ計画の提出が、一部の枠で義務化されています。賃上げ計画がない場合、補助率が下がる場合があります。
- 申請上限の見直し:1事業者あたりの年間申請回数・金額に上限が設けられました。複数のAIツールを一度に申請することを推奨します。
毎年制度が変わる点に注意
IT導入補助金は公募回ごとに細かい要件が変わります。「去年の情報」を元に申請を進めると要件を満たせない場合があります。必ず最新の公募要領(J-Grantsまたは事務局サイト)を確認してください。
申請フロー:交付申請から補助金受取まで
IT導入補助金AI枠の申請は、認定IT導入支援事業者(認定ベンダー)との共同作業で行います。大まかな流れは以下の通りです。
ステップ別の申請手順
- GビズIDプライムの取得(2〜3週間):法人は印鑑証明書、個人事業主は確定申告書等が必要。公募期間前に取得しておくこと。
- SECURITY ACTION宣言(即日):IPAのウェブサイトからオンラインで実施可能。★一つ星は簡単なチェックリストで完了します。
- IT導入支援事業者の選定:補助対象のAIツールを提供する認定ベンダーを選定。IT導入補助金の公式サイトから検索可能。
- ツール選定・見積書取得:認定ベンダーから導入するAIツールの見積書を取得。比較のため2社以上から見積もりを取ることを推奨。
- みらデジ経営診断の実施(15〜30分):中小機構のみらデジサイトで経営診断を実施してスコアを確認。
- 交付申請書の作成・提出:認定ベンダーと協力して申請書を作成。J-Grantsでオンライン提出。
- 交付決定通知の受領(申請後1〜2ヶ月):採択された場合、交付決定通知が届きます。
- AIツールの導入・支払い:交付決定後に発注・契約・支払いを実施。決定前の先払いは対象外になる場合があります。
- 実績報告書の提出:導入後に証拠書類・支払証明等を添付して提出。
- 補助金入金(実績報告後1〜2ヶ月):確定検査が完了後、補助金が振り込まれます。
IT導入支援事業者の選び方:認定ベンダーを見極めるポイント
IT導入補助金の申請では、認定IT導入支援事業者(認定ベンダー)の選定が採択率を左右します。単にITツールを販売しているだけでなく、補助金申請の支援実績が豊富なベンダーを選ぶことが重要です。
良い認定ベンダーの見分け方
採択実績件数・申請支援の専任担当者の有無・申請書作成の支援範囲(丸投げできるか)・過去の不採択時のフォロー体制を必ず確認してください。実績ゼロのベンダーは避けることを推奨します。
- 採択実績が10件以上ある:件数が多いほど審査傾向を理解しています
- 申請書作成を全面サポートしてくれる:「資料を用意してください」で終わるベンダーは要注意
- 認定ベンダーIDをすぐ提示できる:公式サイトで事業者IDを照合して本物か確認
- 追加費用が明示されている:「採択後に成功報酬を追加請求」などの不明瞭な費用体系のベンダーは避ける
- 複数ツールの選択肢を提示してくれる:自社ツールの押しつけではなく、要件に合ったツールを複数提案してくれるベンダーが信頼できます
採択のコツ:審査で評価されるポイントを徹底解説
IT導入補助金の採択率は申請枠によって50〜80%前後とされていますが、事業計画書の品質によって大きく差が出ます。審査で評価されるポイントを押さえておきましょう。
採択される事業計画書の書き方
- 現状課題を数値で表現する:「月に〇時間の手作業が発生しており、年間XX万円の人件費ロスが生じている」のように定量化
- AI導入による効果を具体的に書く:「〇〇AIの導入により業務時間を60%削減し、年間150万円のコスト削減を見込む」
- 賃上げへの波及効果を示す:削減したコストを従業員の賃上げや処遇改善に充てる計画を記載
- セキュリティ対策への言及:AIツール導入に伴う情報セキュリティリスクへの対策を具体的に記述
- 競合比較と導入ツールの選定理由:なぜ他のツールではなくこのAIツールを選んだのか、比較検討の過程を示す
採択のコツ:「数値」と「根拠」が命
IT導入補助金の審査では「定性的な説明」よりも「数値による根拠」が重視されます。現状の業務時間・コスト・売上・顧客数などを具体的に示し、AI導入後の改善効果を論理的に説明することが採択への近道です。
公募タイミングの見極めと申請スケジュール
IT導入補助金は年間5〜7回の公募が行われます。各公募で予算枠が異なるため、早い公募回を狙うのが有利です。
- 第1〜2回公募(2〜4月ごろ):年度当初で予算が潤沢。採択率が比較的高い傾向
- 第5〜7回公募(8月以降):予算残額が少なくなるため、競争率が上がる場合がある
- 申請から交付決定まで約1〜2ヶ月:AIツールを「今すぐ使いたい」場合は、交付決定前の導入が補助対象外になるリスクに注意
他の補助金との組み合わせ:IT導入補助金と省力化補助金の同時活用
IT導入補助金AI枠は、他の補助金制度と組み合わせることで補助効果を最大化できます。ただし、同一の経費への重複申請は禁止されているため、経費の切り分けが重要です。
| 補助金 | IT導入補助金と組み合わせる場合の経費分担 |
|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金 | AIソフトウェア→IT導入補助金、AI機器本体→省力化補助金で別申請可能 |
| ものづくり補助金 | AIシステム開発費→ものづくり補助金、運用SaaS費→IT導入補助金で切り分け |
| 小規模事業者持続化補助金 | AIを活用した販促・EC構築→持続化補助金、バックオフィスAI→IT導入補助金 |
重複申請への厳格な審査
同一経費への重複申請は不正受給となり、補助金全額返還+加算金が発生します。複数の補助金を並行利用する場合は、AI導入補助金完全ガイドを参照のうえ、専門家(社労士・行政書士)に相談し、経費区分を明確に設定してください。