結論:ホームページ制作はデジタル化・AI導入補助金の対象外

2026年現在、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)でホームページ制作を行うことはできません。これは制度の目的が「業務プロセスのデジタル化・生産性向上」にあり、情報発信を主目的とするホームページはこの趣旨に合致しないためです。

重要:HP制作が対象外になった背景

かつてのIT導入補助金(2017〜2020年頃)ではホームページ制作費用が補助対象でしたが、制度改正により除外されました。現在のデジタル化・AI導入補助金では「ITツール(ソフトウェア・クラウドサービス)の導入による業務効率化」が対象であり、単なるWebサイト構築は補助の範囲外です。

ただし、いくつかの例外があります。AIチャットボットやWeb接客ツールを搭載した高機能サイト、ECサイト構築ツールなど、「業務ツール」として認められるケースでは補助対象になる場合があります。また、ホームページ制作に使える別の補助金制度も複数存在します。

この記事では、なぜホームページ制作が対象外なのか、どのような場合に例外が認められるのか、そしてHP制作に使える代替補助金について詳しく解説します。

なぜ対象外なのか:制度の目的との不一致

デジタル化・AI導入補助金の根本的な目的は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入することで、業務プロセスを効率化し、生産性を向上させることです。この「業務プロセスの効率化」という要件が、ホームページ制作が対象外になる最大の理由です。

項目デジタル化・AI導入補助金の対象ホームページ制作
主目的業務プロセスの効率化・自動化情報発信・企業PR
導入するものソフトウェア・クラウドサービスWebページ(静的コンテンツ)
生産性向上の直接効果工数削減・コスト削減・売上向上が定量化可能間接的な集客効果(定量化困難)
継続的な利用月額利用のSaaS・クラウドツール制作して完了(運用は別費用)
業務への組み込み日常業務フローに統合業務フローとは独立

つまり、デジタル化・AI導入補助金は「業務を変えるITツール」に対する補助であり、「情報を発信するWebサイト」に対する補助ではないということです。ホームページは企業の「顔」として重要ですが、制度上は業務システムとは異なる位置付けとなっています。

対象外になる具体的なHP制作費用

以下の費用はすべてデジタル化・AI導入補助金の対象外です:コーポレートサイト制作費、ランディングページ(LP)制作費、ブログ・オウンドメディア構築費、WordPress等CMSの初期構築費、Webデザイン費、ドメイン取得費・サーバー費用、写真撮影・動画制作費(HP掲載用)、SEO対策費・コンテンツ制作費。

過去のIT導入補助金ではHP制作が対象だった経緯

2017年〜2020年頃のIT導入補助金では、ホームページ制作費用が補助対象に含まれていました。この時期に「IT導入補助金でホームページが作れる」という情報が広まり、Web制作会社が積極的にIT導入補助金を活用したHP制作を提案していました。

IT導入補助金におけるHP制作の変遷

2017〜2019年

HP制作が補助対象(ITツールとして登録されたCMSパッケージ経由)対象

2020年(コロナ特別枠)

テレワーク対応・EC構築が優先され、HP制作の優先度が低下縮小

2021年〜

デジタル化基盤導入枠への再編でHP制作が明確に対象外に対象外

2024年〜(現行制度)

デジタル化・AI導入補助金として再編、業務ツール導入に特化対象外

この変遷を知らずに「IT導入補助金でホームページが作れる」という古い情報を信じて申請してしまうと、不採択になるだけでなく、準備にかけた時間とコストが無駄になります。Web制作会社の営業トークで「補助金でHP制作」を提案された場合は、現在の制度ではHP制作は対象外であることを必ず確認してください。

注意:悪質な業者に騙されないために

一部のWeb制作会社が「デジタル化・AI導入補助金でホームページが作れます」と営業しているケースが報告されています。現行制度では単純なHP制作は対象外です。「補助金が使えるから」という理由だけでWeb制作会社と契約することは避け、申請前にIT導入補助金事務局の公式情報を必ず確認してください。

例外:AIチャットボット搭載サイトなら一部対象になるケース

ホームページ制作そのものは対象外ですが、業務ツールとしての機能を持つWebシステムは別です。以下のケースでは、Webサイトに関連する費用がデジタル化・AI導入補助金の対象になる場合があります。

AIチャットボット・Web接客ツールの補助対象

AIチャットボットやWeb接客ツールは、「顧客対応業務を自動化するITツール」として、デジタル化・AI導入補助金の対象になります。これらのツールをホームページに設置する場合、ツール自体のライセンス費用・月額利用料が補助対象となります。

補助対象になるWebツールの例

AIチャットボット

ChatPlus・KARAKURI・Zendesk Answer Bot・PKSHA Chatbot等月額1万〜10万円

Web接客ツール

KARTE・Repro・Sprocket・ecコンシェル等月額3万〜30万円

予約管理システム

RESERVA・STORES予約・Airリザーブ等月額0〜5万円

問い合わせ管理

Zendesk・Freshdesk・Re:lation等月額0.5万〜5万円

補助対象になる費用とならない費用の線引き

AIチャットボットのライセンス費用・初期設定費用・カスタマイズ費用は補助対象になりますが、チャットボットを設置するためのホームページ制作費用(デザイン・コーディング)は対象外です。つまり「ツールの費用は出るが、ツールを載せるサイトの制作費は出ない」という点に注意してください。

AIチャットボットの導入は、顧客対応の24時間自動化・問い合わせ対応コストの削減・成約率の向上など、明確な業務効率化効果が認められるため、審査でも評価されやすい傾向にあります。デジタル化・AI導入補助金でWebに関連する投資をしたい場合は、ホームページ制作ではなくAIチャットボットやWeb接客ツールの導入として申請することを検討してください。

ECサイト構築ツールは別枠で対象

ECサイト(ネットショップ)の構築は、ホームページ制作とは異なり、「販売管理・受注管理・在庫管理を行う業務システム」として補助対象になる場合があります。特にShopify・BASE・カラーミーショップなどのECプラットフォームは、IT導入支援事業者として登録されているベンダーが多く、申請実績も豊富です。

項目通常のHP制作ECサイト構築
補助対象対象外対象になる場合あり
主な機能情報発信・企業紹介受注管理・在庫管理・決済処理
業務プロセスとの関係間接的(集客)直接的(販売・在庫・顧客管理)
生産性向上効果定量化困難受注処理時間削減・在庫回転率向上等
申請時の枠該当なしデジタル化基盤導入枠・インボイス枠

ECサイト構築で補助対象になるもの

ECプラットフォームのライセンス費・月額利用料、決済システム導入費、在庫管理連携費、AI商品レコメンド機能、AIチャットボット(EC向け接客用)などが対象になる場合があります。詳しくはEC・ネットショップのAI導入補助金の記事も参照してください。

なお、ECサイトの「デザインカスタマイズ費用」や「商品撮影費用」は補助対象外となる場合が多いため、見積書の費目を明確に分けることが重要です。ECプラットフォーム自体の利用料と業務システム部分の費用を明確にし、対象外の費用を含めないよう注意してください。

ホームページ制作に使える代替補助金

デジタル化・AI導入補助金ではホームページ制作ができませんが、他の補助金制度ではHP制作が明確に対象となっています。以下の3つの代替手段を検討してください。

小規模事業者持続化補助金(HP制作費・広告費対象)

小規模事業者持続化補助金の概要

補助率

2/3通常枠

上限額(通常枠)

50万円

上限額(賃上げ特例)

200万円

HP制作

ウェブサイト関連費として対象補助額上限1/4

小規模事業者持続化補助金は、ホームページ制作費用が明確に補助対象となる最も利用しやすい制度です。「ウェブサイト関連費」として計上でき、コーポレートサイト・ランディングページ・ブログの構築費用が対象になります。

ウェブサイト関連費の上限制限

持続化補助金では「ウェブサイト関連費」は補助対象経費総額の1/4が上限です。例えば通常枠(上限50万円)の場合、ウェブサイト関連費の上限は12.5万円となります。また、ウェブサイト関連費のみの申請は不可で、他の経費(機械装置費・広報費・開発費等)と組み合わせる必要があります。

持続化補助金でHP制作を申請する場合、「なぜホームページが販路開拓に必要なのか」を事業計画書で明確に説明する必要があります。単に「古いサイトをリニューアルしたい」ではなく、「ターゲット顧客層へのアプローチを強化し、問い合わせ件数を月○件から○件に増加させる」といった具体的な目標を示すことが採択のポイントです。

持続化補助金の詳細は小規模事業者持続化補助金でAI導入の記事で解説しています。

ものづくり補助金(高機能Webシステム向け)

ものづくり補助金の概要

補助率

1/2〜2/3枠・規模による

上限額

750万〜1,250万円

対象

革新的なサービス開発・生産プロセス改善新規性必要

Webシステム

業務連携型の高機能Webシステム開発は対象要件あり

ものづくり補助金は、単なるホームページ制作には使えませんが、「革新的なWebサービスの開発」や「顧客向けポータルシステムの構築」など、業務プロセスと深く連携する高機能Webシステムの開発には活用できる場合があります。

例えば、AIを活用した見積もり自動生成システム、顧客専用のマイページ機能付きポータルサイト、業務システムと連携した受発注Webシステムなど、「ホームページ」の範疇を超えた高機能なWebシステム開発であれば、ものづくり補助金の対象となる可能性があります。

ものづくり補助金で申請する場合の注意点

ものづくり補助金は審査基準が厳しく、「革新性」「優位性」「実現可能性」が求められます。単なるWebサイト構築では採択されません。自社の業務にとってどのような革新的価値をもたらすかを事業計画書で明確に示す必要があります。また、申請から採択まで数ヶ月かかるため、スケジュールにも余裕を持つ必要があります。

自治体独自のHP制作補助金

全国の多くの自治体が、中小企業向けのホームページ制作補助金・助成金を独自に設けています。国の補助金と比べて申請手続きが簡易で、採択率も高い傾向にあります。

自治体制度名(例)補助上限補助率
東京都(区別)中小企業ホームページ作成費補助金5万〜10万円1/2
大阪市小規模事業者Web活用支援事業5万円1/2
横浜市小規模事業者デジタル化支援補助金20万円2/3
名古屋市IT導入・DX推進補助金10万円1/2
福岡市中小企業デジタル化支援補助金10万円1/2

自治体補助金の探し方

自治体のHP制作補助金は公募期間が短いことが多く、情報収集が重要です。以下の方法で最新の制度を探してください:(1)自治体の公式サイトで「中小企業支援」「補助金・助成金」ページを確認、(2)地元の商工会議所・商工会に問い合わせ、(3)中小企業支援のポータルサイト「J-Net21」(中小企業基盤整備機構)で検索、(4)地元の社労士・行政書士に相談。

自治体補助金のメリットは、申請が比較的簡単で審査期間も短い点です。国の補助金(持続化補助金等)と自治体補助金は原則として併用可能(同一経費の重複計上は不可)なので、うまく組み合わせることでHP制作の自己負担を最小化できます。

補助金比較表:ホームページ制作に使える制度一覧

ホームページ制作に関連して利用できる補助金制度を一覧で比較します。自社の規模・業種・制作内容に合わせて最適な制度を選定してください。

補助金制度HP制作補助率上限額申請の難易度向いている事業者
デジタル化・AI導入補助金対象外1/2〜2/35万〜450万円中程度業務システム導入が目的の事業者
小規模事業者持続化補助金対象(1/4上限)2/350〜200万円低〜中小規模事業者(従業員20名以下)
ものづくり補助金高機能システムのみ1/2〜2/3750〜1,250万円高い革新的Webサービス開発
自治体独自補助金対象1/25〜20万円低い地域の小規模事業者
事業再構築補助金新事業として1/2〜2/3100〜1,500万円高い新事業としてWeb事業を開始する場合

最もおすすめの選択肢

一般的な中小企業のホームページ制作には、小規模事業者持続化補助金が最も利用しやすい制度です。申請の難易度が比較的低く、HP制作が明確に対象で、商工会議所のサポートも受けられます。HP制作費用が50万円以下の場合は、持続化補助金を第一候補として検討してください。

なお、同一のHP制作費用を複数の補助金で重複計上することは禁止されています。持続化補助金でHP制作費を補助してもらい、同時にデジタル化・AI導入補助金で業務システム(AIチャットボット等)の費用を補助してもらう、という組み合わせは可能です(経費の区分が明確な場合)。

組み合わせ戦略:HP制作と業務システム導入を同時に進める方法

ホームページ制作と業務システム(AI・ITツール)の導入を同時に進めたい場合、複数の補助金を組み合わせることで自己負担を最大限に抑えることができます。以下に具体的な組み合わせ戦略を紹介します。

推奨する補助金の組み合わせパターン

パターンA

HP制作→持続化補助金(上限50万円)+業務システム→デジタル化・AI導入補助金最も一般的

パターンB

HP制作→自治体補助金(上限5〜20万円)+AIチャットボット→デジタル化・AI導入補助金小規模向け

パターンC

ECサイト構築→デジタル化・AI導入補助金+ブランドサイト→持続化補助金EC事業者向け

パターンA(最も一般的な組み合わせ)の具体例を示します。

項目費用利用する補助金補助額自己負担
コーポレートサイト制作80万円持続化補助金(通常枠・ウェブ関連費上限12.5万円)12.5万円67.5万円
チラシ・パンフレット制作30万円持続化補助金(広報費)20万円10万円
AIチャットボット導入50万円(年間)デジタル化・AI導入補助金25〜33万円17〜25万円
勤怠管理AI30万円(年間)デジタル化・AI導入補助金15〜20万円10〜15万円
合計190万円72.5〜85.5万円104.5〜117.5万円

組み合わせ利用の注意点

複数の補助金を組み合わせる際は、同一経費を複数の補助金で重複計上しないことが最も重要です。見積書・請求書を補助金ごとに明確に分け、どの経費をどの補助金で申請するかを事前に整理してください。不明な点は持続化補助金の詳細バックオフィスAI補助金ガイドもあわせて参照してください。

また、広告費については別記事のデジタル化・AI導入補助金で広告費は対象外:代わりに使えるマーケティングツール補助を解説で詳しく解説していますので、広告費の補助金活用を検討している方はあわせてご確認ください。