中小企業省力化投資補助金とは:制度の概要と特徴

中小企業省力化投資補助金は、デジタル化・AI導入補助金2026の主要施策のひとつで、人手不足に悩む中小企業・小規模事業者がAI機器やロボット、IoT機器を導入して省力化・生産性向上を図るための補助金です。2024年度から本格始動し、2026年版では対象カタログの拡充と申請手続きの簡略化が進んでいます。

中小企業省力化投資補助金2026

補助率

1/2〜2/3(規模による)

中小企業上限

1,500万円

小規模事業者上限

1,000万円

下限額

なし(少額も可)

この補助金の最大の特徴は「カタログ型」の仕組みにあります。従来の補助金のように詳細な事業計画書を書く必要がなく、あらかじめ登録された製品カタログから機器を選んで申請するシンプルな方式です。審査が比較的簡略で、採択スピードが速いことが特徴です。

カタログ型補助金とは

カタログ型とは、国があらかじめ審査・登録した機器・製品の一覧(カタログ)から選んで申請する仕組みです。製品の省力化効果が事前に認定されているため、申請者が省力化効果を自ら証明する必要がなく、申請書類が大幅に簡略化されています。

申請対象となる企業・事業者

中小企業省力化投資補助金の申請対象は以下の通りです。

  • 中小企業者:製造業・建設業・運輸業等は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業・小売業は各業種基準に準拠
  • 小規模事業者:製造業等は従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下
  • 個人事業主:上記の小規模事業者要件を満たす個人事業主も対象

大企業・みなし大企業は対象外

大企業(資本金・従業員数が基準超)や、大企業が株式の過半数を保有する「みなし大企業」は対象外です。グループ会社がある場合は出資関係を必ず確認してください。

カタログ型の仕組み:なぜ審査が速いのか

省力化投資補助金がカタログ型を採用している理由は、申請者の負担軽減と迅速な補助金交付にあります。通常の補助金では申請者自身が省力化効果を証明しなければなりませんが、カタログ型では製品自体が事前に審査・認定されています。

比較項目カタログ型(省力化補助)通常型(ものづくり補助等)
事業計画書簡易的な申請書のみ詳細な事業計画書が必要
省力化効果の証明不要(カタログ登録済み)申請者が定量的に証明必要
審査期間2〜4週間程度2〜5ヶ月程度
採択方式先着順(要件充足確認)競争審査(点数評価)
採択率要件を満たせば高い制度・公募回により30〜70%

カタログ型は先着順のため、予算が消化され次第終了します。「申請しようと思ったら予算終了」というケースも多いため、早めの申請が重要です。

補助対象AI機器一覧:カタログに登録されている主なAI製品

2026年時点でカタログに登録されている主なAI機器・自動化機器のカテゴリと製品例を紹介します。カタログは随時更新されるため、最新情報は中小企業省力化投資補助金の公式サイトで確認してください。

ロボット・搬送系AI機器

  • 配膳ロボット:SoftBank Servi、Keenon W3・T6・D7シリーズ、PUDO Station等(飲食・ホテル向け)
  • 自律搬送ロボット(AMR):倉庫・工場内の物品搬送を自動化するAIロボット(ギークプラス、Geek+、LAIFUシリーズ等)
  • 協働ロボット:組み立て・ピッキング工程の自動化(ファナック、ユニバーサルロボット等の認定製品)
  • 清掃ロボット:施設内自律清掃ロボット(Whiz by SoftBank、KINNECT等)

配膳ロボットは飲食店で最も採択実績が多い

カタログ型省力化補助金での採択件数は、配膳ロボットが飲食業で断トツです。人手不足が深刻な飲食業は省力化効果が認められやすく、補助額50〜300万円の採択事例が多数あります。

AIカメラ・IoT・画像認識系

  • AI品質検査カメラ:製造ラインの外観検査・不良品検出AIカメラシステム
  • AIカメラ(来客分析):店舗・施設の入退場カウント・行動分析・棚前滞在分析
  • スマートロック・入退室管理AI:顔認証・QRコード認証の自動入退室管理システム
  • 在庫管理AIシステム:棚卸しの自動化・IoTセンサーによるリアルタイム在庫把握

POSレジ・セルフサービス機器

  • AIセルフレジ・セルフオーダー端末:飲食・小売向けのタッチパネル式セルフオーダー・会計システム
  • AI決済端末:顔認証決済・キャッシュレス自動決済システム
  • AI受付・コンシェルジュ端末:ホテル・医療・公共施設向けのAI自動受付キオスク

カタログへの新規登録は随時受け付けられており、製品数は増加し続けています。希望する製品がカタログ未掲載の場合は、メーカーに登録申請を促すことも選択肢のひとつです。

補助率と上限額:規模別・賃上げ要件別の計算方法

中小企業省力化投資補助金の補助率と上限額は、企業規模と賃上げ要件の達成状況によって変わります。

企業区分基本補助率賃上げ特例上限額
中小企業(従業員21人以上)1/22/3(+上限引上)1,500万円(基本750万円)
小規模事業者(製造20人以下)2/3さらに優遇あり1,000万円

賃上げ要件で補助上限が2倍になる

補助事業完了後、従業員の給与を一定率(例:事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上引き上げ等)引き上げることを計画・実行することで、補助上限が基本額の2倍になります。賃上げ計画がある場合は必ず申請時に申告してください。

自己負担額のシミュレーション例:

  • 配膳ロボット2台(導入費用200万円)、中小企業・補助率1/2の場合:補助額100万円、自己負担100万円
  • 自律搬送ロボット(導入費用600万円)、小規模事業者・補助率2/3の場合:補助額400万円、自己負担200万円
  • AI品質検査システム(導入費用1,200万円)、中小企業・賃上げ特例・補助率2/3の場合:補助額800万円(上限適用)、自己負担400万円

申請手順:カタログ選定から補助金受取まで

省力化投資補助金の申請はカタログ型のため、通常の補助金より手続きがシンプルです。

ステップ別の申請手順

  1. GビズIDプライムの取得(2〜3週間):補助金申請ポータル(J-Grants)へのログインに必要。まだ取得していない場合は最優先で手続きを。
  2. カタログから製品を選定:省力化投資補助金の公式サイトから登録製品カタログを検索。業種・用途・価格帯で絞り込み、自社の課題に合った製品を選ぶ。
  3. 販売事業者への相談・見積取得:カタログ製品を販売する登録販売事業者に連絡し、見積書を取得。複数の販売事業者に見積りを依頼することを推奨。
  4. 申請書類の作成:販売事業者と協力して申請書を作成。省力化効果・導入計画・賃上げ計画等を記載。
  5. J-Grantsでオンライン申請:GビズIDでログインし、必要事項を入力・書類をアップロードして申請。
  6. 交付決定通知の受領(約2〜4週間):先着順のため、申請受付後比較的早期に結果が通知されます。
  7. 機器の発注・導入:交付決定後に発注・契約・設置を実施。決定前の発注は補助対象外になります。
  8. 実績報告書の提出:導入後、稼働状況・省力化効果の実績を報告書で提出。
  9. 補助金の入金:確定検査完了後に補助金が振り込まれます。

先着順のため予算枯渇に注意

カタログ型は先着順のため、申請可能期間内でも予算が消化されると受付終了となります。「来月申請しよう」と思っていたら終了していた、というケースが実際に発生しています。準備ができ次第、早期申請を推奨します。

採択事例:業種別の活用実績と補助額

中小企業省力化投資補助金(カタログ型)の主な採択事例を業種別にご紹介します。実際にどのようなAI機器・ロボットが採択されているか参考にしてください。

<a href="/articles/inshokuten-ai-hojokin/">飲食業</a>の採択事例

居酒屋チェーン(従業員35名)の採択事例

導入機器

配膳ロボット4台+セルフオーダー端末

導入費用

320万円

補助額

160万円(1/2)

自己負担

160万円

ホールスタッフの配膳業務を配膳ロボットが代替することで、ピーク時のホール人員を3名から1名に削減。浮いた人員をキッチン・接客品質向上に充てることで売上も向上した事例。

<a href="/articles/seizogyo-ai-hinshitsu-kensa-hojokin/">製造業</a>・倉庫業の採択事例

部品製造業(従業員18名・小規模事業者)の採択事例

導入機器

AI外観検査カメラシステム

導入費用

480万円

補助額

320万円(2/3)

自己負担

160万円

熟練作業者が目視で行っていた外観検査工程を画像認識AIに置き換え。検査精度が向上し、不良品流出率を従来比80%削減。熟練作業者は品質管理・改善業務にシフトし、時間外労働も削減された事例。

申請時の注意点と失敗しないためのチェックリスト

省力化投資補助金の申請で失敗しないために、以下のポイントを事前に確認してください。

  • カタログ登録製品か必ず確認:カタログ未掲載の製品は補助対象外。製品選定時に必ず公式カタログで型番・製品名を照合すること。
  • 販売事業者も登録事業者か確認:製品がカタログ登録されていても、販売する事業者が「登録販売事業者」でなければ申請できません。
  • 省力化効果の明示が必要:申請書に「どの業務が何時間削減できるか」を具体的に記載する必要があります。カタログ型でも全く書かなくてよいわけではありません。
  • 事後の実績報告を怠らない:導入後の省力化効果実績報告が必要。稼働状況・削減時間数等の記録を導入直後から残しておくこと。
  • 賃上げ計画は慎重に:賃上げ特例を申請した場合、実際に賃上げを実行しなければ補助金返還リスクがあります。実現可能な計画のみ申告してください。

申請前チェックリスト

以下をすべて確認してから申請してください:GビズIDプライム取得済み / 製品がカタログ登録済み / 販売事業者が登録事業者 / 見積書取得済み / 省力化効果(削減時間・人数)を数値化済み / 賃上げ計画の実現可能性を確認済み

他の補助金との併用:IT導入補助金・ものづくり補助金との組み合わせ方

省力化投資補助金は、他の補助金と同一経費への重複申請は禁止されていますが、異なる経費に対して別の補助金を組み合わせることが可能です。

  • 省力化補助金 × IT導入補助金:AI機器のハードウェア費用→省力化補助、AI機器と連携するソフトウェア・クラウドSaaS費用→IT導入補助金として別申請可能
  • 省力化補助金 × ものづくり補助金:汎用ロボット→省力化補助、ロボット専用の治具・設備改修費→ものづくり補助金として切り分けた事例あり
  • 省力化補助金 × 地域の助成金:都道府県・市区町村独自のロボット導入助成金と国の省力化補助金を組み合わせ、自己負担を最小化するケースも

重複申請は絶対禁止

同じ機器・同じ費用に対して複数の補助金を申請することは不正受給となります。補助金の受給後に発覚した場合、全額返還+加算金が課されます。複数制度の併用は必ず専門家に相談してから実施してください。